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2008年2月 9日

東京魔人学園剣風帖外伝  勧誘戦 東京魔人学園剣風帖外伝  勧誘戦

 東京都新宿区。屋上からは都庁が一望できるその場所に、他校からはどういう理由からか『魔人学園』と呼ばれる高校-東京都立真神学園高等学校はある。
 連日の様にあらゆるメディアで報道される様々な怪奇事件。  そしてそれに呼応するかのように現れる、その身に不思議な『力』を宿した高校生達。 とてつもない動乱が東京都、いや日本全体を包み込もうとしている中。 その動乱の中心に位置する事になるであろう、真神学園の5人は未だその事を知らぬまま普通の学園生活を送っていた。

 そんなある日の放課後。  3-Cの教室で帰り支度をしていた緋勇龍麻の所へ、2人の男子生徒-レスリング部長、醍醐雄矢と剣道部部長、蓬莱寺京一-が近付いてきた。 彼等は緋勇に「よぉ」と声をかけると、彼を囲む様に椅子に腰を下ろした。
「で、どこに入部するつもりなんだ?」 
「・・・」
 いきなりの醍醐の言葉に、緋勇は無言のまま悩み続ける。何故醍醐がそんな事を口にしたのか。  それは少し前、緋勇が真神学園に転入してきた時まで遡る。

緋勇龍麻が絡んできた佐久間猪三を軽くいなしてしまうのを目の当たりにした醍醐は。 緋勇の繰り出すその柔軟で、それでいて重みのある技に興味を持ってしまった。 腐ってもレスリング部ナンバー2の実力を持つ佐久間が弱い訳ではない。単純に緋勇が強過ぎたのだ。
・・・そんな圧倒的な力を見せ付けられて、武道家としての血が騒がぬはずがない。  醍醐は次の日、緋勇に手合わせを願い出る事になる。  一見優男風の緋勇と、レスリングで鍛え上げられた屈強な肉体を持つ醍醐の真剣勝負。  それは緋勇の勝利に終わったのであった。

 それほどの力量を持つ緋勇がどの部活にも入らないのはもったいないと醍醐は思ったのか。  それ以来というもの、事あるごとにそのような話を持ちかけてくるようになったのであった。
「どうだ、龍麻。もし良かったらレスリング部に入らないか。お前が入ってくれれば百人力・・・」
「おいおい醍醐。勝手に龍麻をレスリング部に入れようとすんじゃねぇよ」
 真剣な会話に横から割りこんできた京一に、醍醐は少し顔をしかめた。
「勝手にとはなんだ、勝手にとは。俺はだな・・・」
「一対一で負けた腹いせにレスリング部に入れて、レスリングで龍麻を負かそうってコンタンなんだろ?」
 うっ、と一言。少なからずそういう気持ちがあったのだろう、醍醐は慌てて首を振る。
「そ、そんな事はない!」
 そんな彼の必死な顔を見て、京一はふっと溜め息をつく。ゆっくりと緋勇の方へ顔を向けると少し声をひそめる。
「龍麻やめとけやめとけ。あんな男同士でくんずほぐれつやるモン始めると、醍醐から筋肉菌がうつるぞ」
「なんだその筋肉菌というのは」
「どうせ入るんなら剣道部には入れよ。お前が入ればオネェチャン達も応援してくれるだろうしなぁ・・・」
京一はふふっと薄ら笑いを浮かべる。

 確かに緋勇龍麻のルックスは、傍目から見てもレベルが高い。  転入当時にクラスの女子生徒から質問攻めにあったことからも、それは容易に想像がつくだろう。  京一本人の容姿も、緋勇に負けず劣らず高いレベルではある。  が、下級生からの人気は非常に高いものの、彼の好みのタイプである『美人のオネェチャン』というような同学年以上の女性からの人気はそれほどでもない(もちろんそれには京一の性格、という修正値が多分に含まれているせいでもあるが)。  もし緋勇が剣道部に入部すれば、そのような女性も見学や応援に来てくれるかもしれない。女性の声援が練習や試合の意欲に直結する京一にとって、それは歓迎すべき事だった。

 が、醍醐がそんな不純な動機を容認する訳がない。慌てて反論し始める。
「京一!お前こそ何勝手なこと言っているんだ。大体お前、部長のわりにろくに部に顔すら出してないじゃないか」
 そんな必死の反論に、京一は涼しげな顔で答える。
「あぁ、龍麻が入部してくれるってんなら俺も喜んで出るぜ。・・・それより醍醐よ、お前さんのレスリング部だって開店休業みてぇなモンじゃねぇか?え?」
「うっ・・・」
「と、いう事で剣道部に・・・」
「おい!何がという事でだ!勝手に決めるんじゃない!」
「何だと!?」
 醍醐と京一が一触即発の様相を呈していた丁度その時。教室の扉がガラガラと音を立てて開く。そこから入ってきたのは2人の女子生徒、美里葵と桜井小蒔だった。
「こんにちは」「おっす」
 と、小蒔は2人の凄まじい形相を見ると、3人の所に近付きながら、
「あれっ?3人でなにやってるの?」
と声をかける。その疑問に対し醍醐と京一は、
「おうっ、小蒔か。何でもねぇよ、気にすんな」
「そ、そうだぞ、桜井」
 と平静を装いながら何とかその場を取り繕おうとする。その2人の態度をどう見たのか、小蒔はふーんと言うと誰もいないはずの方向に視線を送り、
「そこで聞いてたよね、アン子」
 アン子?その(ある意味不吉な)言葉に、その場にいた4人全員が小蒔の視線をトレースする。小蒔の視線の先、窓の向こうのベランダにいたのは。カメラを手にしたメガネの女子生徒、

 

『校内随一の地獄耳』

こと新聞部部長、遠野杏子その人だった。
「聞いてたわよ」
 こんちわ、というと杏子はベランダから教室の中へと入ってくる。京一は驚愕の表情を浮かべた。
「げげっ!あ、アン子!お前なんでそんなとこにいんだよ!」
「別にいいでしょ、どこにいたって」
 そ知らぬそぶりで杏子は小蒔に近付く。ラーメン1杯で手を打ってあげるわよ、というと杏子は小蒔に話し始める。
「えーとね、これこれこういう訳で・・・」
「おいっ!アン子!小蒔に根も葉もねぇ事を吹き込むんじゃねぇ!」
京一が怒鳴る。が全ては後の祭。事の顛末を飲みこんだ小蒔は、
「ふーん・・・そうなんだぁ」
 と笑みを浮かべた。
「か、完璧に信じてやがる・・・」
 京一は床に崩れ落ちた。
「京一、本当の事なんだから仕方あるまい」
「だ、醍醐・・・お前やけにものわかりがいいな・・・」
呆れたような諦めたような声を出す京一。小蒔は少し考え込むと、
「じゃあ、こうしたら?」
 と、とんでもない事を言い出した。


小蒔が提案した、とんでもない決着のつけ方。 それはこの前6人が偶然入りこんでしまったあの『旧校舎』を舞台としたものである。 同時に地下1階から下へ降りていき、そこから地下30階に到達するまでの間に倒した魔物の数で勝負をつける、というそれは非常に危険で、そして過酷なものであった。
「小蒔・・・それはちょっと危ないんじゃないの?」
 小蒔の提案を静かに聞いていた美里は、心配げな声を出す。その言葉に対し小蒔は、
「大丈夫だよ、2人とも強いし。それに」
「それに?」
「ボク達と緋勇クンも一緒に行くんだからさ」
と事も無げに言った。その言葉に醍醐と京一は、
「あぁ!?」
「さ、桜井。それはダメだ」  と抗議の声を上げる。が、小蒔は少し怒った顔をして、
「じゃあ誰が倒した魔物の数をカウントするっていうのさ!」
「誰が、ってそりゃあよぉ・・・」
京一はモゴモゴと口を動かす。が、小蒔は気にせず続ける。
「醍醐クンはともかく、京一はごまかしそうだし」
「そうねぇ」
「誰がごまかすだと!?」
 怒鳴る京一。小蒔と、何時の間にか小蒔に同調した杏子は、京一に突き刺さるような疑惑の視線を送った。
「あやしいなぁ・・・」
「あやしいものねぇ・・・」
 2人の無言の圧力。それに居たたまれなくなったのか、
「・・・あーっ!!分かった分かった!」
 と渋々同意してしまう京一だった。
「お、おい!京一!」
「仕方ねぇだろ、どうせついてくる気なんだからよ」
「しかしな・・・」
 醍醐はまだ何かをぶつぶつと呟いている。一応の結論がまとまった所で、
「じゃ、明日の放課後ね」
「おぅっ・・・っておいアン子!誰がお前まで連れてくって」
 空気を切るような乾いた音。と同時に杏子の右手が京一の頬を打ち抜く。京一はそのままその場に倒れた。
「ぐ、ぐふっ」
「じゃ、またね」
 しれっとした顔で杏子は手を振ると、「さて、色々準備しなきゃ」と独り言を言いながら教室を出ていく。  それを横目で見ながら、緋勇は何かを思いついたようにポンと手を叩いた。

 翌日の放課後。今日は土曜日。午前中で授業が終わっている。緋勇・京一・醍醐・小蒔・美里・・・とおまけの杏子は、激闘の舞台となるであろう旧校舎の前に立っていた。
「・・・本当にいいんだな」
「それはこっちのセリフだぜ、醍醐」
 睨み合ったままの2人。それを横目に、
「おっさきー」
 と小蒔は旧校舎にすたすたと入っていく。
「あっ、小蒔!手前何勝手に・・・」
「なにやってんのよ、先に行くわよ」
「あ、アン子まで・・・」
「先に行くぞ」
「お、おい!醍醐!」
待ってくれよー、と京一は旧校舎へと入っていった5人を追いかけた。

「やれやれ・・・」
 旧校舎の上から6人を見下ろす人影。  旧校舎を守る彼には、たった今旧校舎内へと侵入していった6人の言動・行動が理解出来なかった。 そんなどうでもいいような事に、何故命を賭けるような真似をするのか。  ・・・勿論、理解する気もないのだが。
 彼はまぁいい、と呟く。口にくわえていた煙草を投げ捨てると、彼もまた旧校舎へと足を踏み入れた。  ・・・もしもの場合の為に。

 旧校舎に入ってすぐ。真っ先に根を上げたのは、醍醐だった。勿論、魔物が手強い訳ではない。
「くっ、これほど足場が悪いと・・・」
 その元々の巨体からただでさえ他の人々よりも動きが遅いというのにも関わらず、安全ブーツなどという荒地を歩くのには適していないものを履いているのだ。それは当然の事ではあった。
 悪戦苦闘している醍醐を、京一は指差しながら大笑いする。
「はっはっは!そんなモンはいてっからだぜ!俺なんかほれっ!」
 京一は日本刀を振り下ろす。そこから巻き起こる剣撃に、魔物は吹き飛ばされる。剣掌・旋。
「お前と違って、遠くの奴等までぶちのめせるぜ!」
 京一はまだ倒れない魔物を見ながらうそぶく。そのままその場から1歩も動こうとしない京一を見て。小蒔はポツリと呟く。
「・・・一回使うとさっぱり動けなくなるみたいだけどね」
「小蒔、うるせえ!」
ほぼ同時に返ってくる怒鳴り声。その声に小蒔はふっと薄笑いを浮かべると、京一のいる方向に向き直り、
「・・・ごめん」
 と弓を引いた。
「・・・お、おい!小蒔、こっちに弓向けんじゃねぇよ!」
 そんな京一の悲鳴にも似た叫びなど全くお構いなく、小蒔は矢を放つ。勢いよく飛び出した矢は京一の顔の脇30cm横を通り抜けると、そのまま一直線に魔物の額へと突き刺さる。先程の京一の剣撃で手傷を負っていたその魔物はそのまま倒れた。
「あぁっ!そいつは俺が頑張って削ってた奴じゃねぇか!こーまーきーっ!!」
「へへーん、早い者勝ちだよー」
 人差し指であっかんべーをする小蒔と、それを憎らしげに見ながらも全く動けない京一。その2人を遠くから眺めつつ、
「ど、どうでもいいが動けん・・・」
 と未だ1匹も魔物を倒せていない醍醐。非戦闘要員の杏子は、カメラフラッシュを目くらましにして器用に魔物を避けながら、3人の勇姿(?)をフィルムに収めている。
「うふふっ、4人とも頑張ってるわね。緋勇君・・・あらっ?」
 攻撃する術を持たず、一人皆の傷を癒す役目をしていた美里は、隣にいた緋勇に声をかける。が、今までいたはずのそこには誰もいない。彼は、何故か遙か向こうで魔物を蹴り倒している。
「え?いつの間にあんな所まで・・・」
いぶかしむ美里をよそに。緋勇は何度も懐に手を出し入れしつつ、次々と魔物を蹴り倒していた。

そんなことがありつつ。6人は今回の目標のちょうど半分、地下15階まで降りた。幾度となく訪れた危機を乗り切る事が出来たのも、6人(実質5人)が力を合わせて(?)行動してきたからではある。
「お疲れ様」
「おつかれー」
 6人の中では比較的疲労の色の少ない美里と杏子は、準備していたクーラーボックスから冷えたコーラを出すと、疲れから座りこんだ4人に手渡す。杏子からコーラを受け取った京一は、
「おいアン子、まだついてきてんのかよ」
 と呆れ顔をする。と、何かを思いついたような顔をすると、京一は杏子を呼び寄せて呟いた。
「で、お前は何匹倒したん」
瞬間。両頬に走る激痛。杏子の容赦のない往復ビンタを受けた京一はその場に崩れ落ちた。
「ぐ、ぐふっ」
「なーにやってんだか」
 呆れる小蒔。彼女は自分の背後にいる『8人目の人物』にはまだ気付いてはいない。
「やぁ」
「わ、わぁっ!?」
不意にかけられた予想外のその声に、小蒔は悲鳴を上げながら、四つんばいのままあたふたと前に走る。その悲鳴に、一同は小蒔がいる方向を向く。腰を抜かした小蒔の後ろにいた人物。それは屋台を引いた骨董屋の若旦那、如月翡翠だった。
「お、お前なんでこんな所にいるんだよ?」
 というか、その屋台は何?京一の、そのもっともな疑問に対して、如月は一言、
「さぁね」
 と言うのみ。
「あ、あのなぁ・・・」
 思わず脱力してしまった京一とは対照的に、小蒔は一瞬にして気を取り直す。  屋台に揃えられた様々な武具を一通り確認すると、
「ま、まぁいいや。じゃ、ボクはこの弓をもらうよ」
「どうもありがとう」
 そのある意味滑稽とも言える光景を見て。京一も我に返る。
「おい!小蒔!何勝手に」
 が小蒔はそんな京一の声など全く気にもせず、
「醍醐君はっと。・・・・・・あ、これにすれば?」
「あ、ああすまんな」
 とほのぼのとした会話を交わしている。少しして、小蒔はあ、と思い出したように京一の方に向き直ると、
「で、京一は・・・勢州村正?」
「いるか!そんなモン!」
「あー、せっかくの人の好意を無視するなんて・・・」
「どこが好意だ!」
「いいから受け取れよ!」
「いらん!」
「うーけーとーれーっ!」
 何が何でも村正を手渡そうと駆け寄ってくる小蒔と、それから逃げ回る京一。  その光景をフィルムに収めた杏子が、現像し引き伸ばしたそれに『トムとジェリー的風景』というタイトルをつけて2人にプレゼントした・・・、というのは後日の話である。
「日本刀を振り回すトムと、必死で逃げ回るジェリーというのは・・・違うんじゃないか?遠野」
 と冷静に醍醐が指摘した、というのも後日の話である。

   

しばらくして。杏子が補充用のフィルムを何本か購入し、緋勇や美里もいくつかの消耗品を購入し終わると、
「じゃあまた」
と、如月は屋台を引いてその場から立ち去る。ようやく追いかけっこを止めた京一と小蒔は顔を見合わせた。
「・・・屋台引いたままどっかに行っちまいやがった。・・・あいつ一体どっから来てどっから帰るんだ?」
「・・・さあね」

「でぇりゃあっ!」
 地下30階の親玉、大獄丸が崩れ落ちる。接近戦を挑んでいた醍醐と京一は、息を切らしながらその場に倒れこんだ。
「はぁ・・・はぁ・・・お、俺は15匹だぜ。醍醐、お前は何匹だ」
「ふぅ・・・ふぅ・・・お、俺も15だ。・・・同じだな」
倒れたまま、「へへっ」「ははっ」と笑いあう2人。遠くから弓で攻撃していた小蒔は、そんな2人に近付きながら申し訳なさそうに言う。
「あのー、ボクも15匹なんだけど・・・」
 その言葉に、倒れていた京一は勢いよく跳ね起きる。
「なっ!小蒔!てめぇ何勝手なことを・・・」
「ごめーん」
 ぺろっと舌を出す小蒔。が、不思議とそれほど怒りはわいてこない。結果よりも、ここまで来れた事に京一は充実感を覚えていた。
「・・・あの、話の途中でなんなんだけど」
「えっ?どうしたの、葵」
皆が充実感に浸っている中、美里は周りを見まわしながら少し躊躇いつつも口を開く。
「・・・一番多く倒したのって、誰だか分かる?」
「えっ?」
「って、3人とも同じなんだろ?まさか・・・」
京一は何かを思いついたように、とある人物の顔を見る。
「アン子、お前か?」
「そんな訳ないでしょ!?」
 怒りに任せた杏子の右アッパーが、京一の顎を的確に打ちぬく。京一は宙を舞うと、そのまま地面に倒れこんだ。
「ぐ、グーで殴るんじゃねぇよ・・・・・・お、お前のその腕力なら・・・ぐふっ」
「ふんっ!」
 そんな2人を寝転がったまま見ていた醍醐は、ん?と疑問の声を出すとゆっくり起きあがった。
「じゃあ誰なんだ?美里」
「そ、それは・・・」
 美里はゆっくりとその人物を指差す。その指の先にいる人物、それは緋勇龍麻その人だった。
「龍麻だと?」「緋勇クン?」「緋勇君なの?」
3人口を揃えて驚きの声を上げる。杏子のパンチを受け倒れていたはずの京一も、あまりの驚きから起きあがった。
「あぁ!?おい龍麻、お前一体何匹倒したんだよ?」
「・・・」
それに対して緋勇は沈黙を貫く。代わりにそれを告げたのは美里だった。
「それが・・・52匹なの」
「はぁ!?」
今度は4人同時の声を揃える。その驚愕の事実に唖然としたままの3人を横目に、醍醐は、
「何で龍麻はそんな馬鹿げた数の魔物を倒す事が出来たんだ?美里」
と冷静に、当然の疑問を口にする。それに対して、美里はやはり申し訳なさそうに、
「・・・分からないの」
 と一言。
「気がつくと、緋勇君がビックリする速さで魔物を倒していたんだけど・・・よく分からないの」
 そういうと、美里はごめんなさいと頭を下げた。

・・・勿論これにはきちんとした理由がある。日頃の鍛錬の賜物、というそれもその一つ。だが、一番の理由は緋勇がこっそりと忍ばせていたもののせいである。緋勇が懐に忍ばせていたもの、それは如月骨董店で大量に購入していた、月草だった。

「まぁいい。という事はだ」
「龍麻に選択権があるということだな?」
「で、緋勇クンはどこに入部するの?」
「・・・ひ」
「ひ?」
「ひよこ同好会・・」
その言葉に派手にこける京一と醍醐。それを見ながら、6人を見守っていた彼-犬神杜人は、
「やれやれ・・・」
 と呟くのが精一杯だった。

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